Kyoko Matsuoka Laboratory at TDU

House N
N邸 / 佐賀,日本

Photos by Takeshi Taira

    既存建物の屋根を利用すべく、寄り添って建てた佐賀の住宅。

    Single dwelling addition in Saga, Japan. This house uses the roof of the existing clinic building to generate an outdoor living space.

 

Step One

    既存建物は、2階に木造で増築できるように設計されていた。

Step Two

    今回、鉄骨造とRC造で住宅をつくるにあたり、既存の屋根を有効利用するため、屋根の一部を取り除き荷重を減らした。

Step Three

    既存の東側にRC造をつくり、両方にまたがるように鉄骨造のボックスを載せた。

Step Four

    既存建物の屋根は広々としたテラスとなり、第二の地盤のように利用される。

待されます。

    戸建住宅をやったことがなかった私に、ある日、住宅を設計してくれとのメールが送られてきた。奇特な施主、N先生夫妻である。海外では住宅のリノベーションを手掛けたことはあったし、別に戸建住宅の設計を避けていたわけでもないが、積極的でなかったのは確かで、また依頼もこなかった。N先生は佐賀でクリニックを営んでいて、その広い敷地のどこかに自宅を建てたいから頼みたい、ということだった。なぜ私に頼んでこられるのかよくわからないまま、「ウマが合わないと思ったらいつでも断ってください」と言いつつ、まず提案をしてみることになった。どうやらコンクリートの家に住みたいと思ったのが私に頼むきっかけとなったようだったが、私はどこに設計の取っ掛かりを見出すか考えあぐねていた。気の早いことで住んでいた木造住宅はすでに壊されており、子供3人の5人家族はクリニックの一角に住んでいた。

    もらった資料をはぐりつつ、既存のクリニックの図面を見ていると、鉄筋コンクリート造の上に一部木造を増築できるように設計されていることを発見した。そこで俄然やる気が出たのである。そのクリニックにくっつけて新しく鉄筋コンクリート造をつくり、二つにまたがる形で2階に、木造ではなく鉄骨造の箱を載せるというアイデアを思いついたからだ。クリニックは築10年を超えていて、雨漏りも起きており、屋根の防水をやり直す必要があった。改修をしてデッキを敷けば、屋根は住宅にとっての広々とした庭になる。敷地は十分広いのだが、2階レベルにももう一つの地盤ができるようなものだ。 鉄骨造では木造の荷重よりも重いので、既存建物の駐車場部分の屋根を一部撤去してバランスを取った。完成した2階の庭は、葡萄や野菜の育つ、庭というより畑と化して喜ばれている。

    5人家族がクリニックの一角でとても仲良く暮らしていたので、家が広くなってもその関係を損なわないようにしようと話し合った。2階の子供達の部屋はできるだけ小さく、そしてその前に共有の勉強スペースを設け、1階のキッチンやリビングルームと吹抜けをとおして連続させ、家族が繋がっていられるようにした。本当にそこで勉強してくれるのかと半ば不安であったが、訪ねると必ず教科書やら参考書やらが置かれているので、一応想定どおりのようである。

    想定外だったのはN先生が意外に器用で、ダイニングテーブルなどを自作されるだけでなく、1階の庭にはプールを作ったりニワトリ小屋ができたりと、行くたびにどんどん家が成長していることである。住宅をやったことがない建築家に設計を頼む人だけのことはあるなと、毎度感心するのである。

 

 

 

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